キャリアを描け

上層部の発言の一言目は「キャリア」
増加する退職者に、さすがにヤバいと思ったのか、「会社の成長は社員の成長、描くキャリアを実現できる。全社員のキャリアプランを支援」と謳っている。離職抑制を狙っているのか、低迷する業績の話ができないので「キャリア」を語り時間を稼いでいるのか。
厚労省はキャリアを「一般に「経歴」、「経験」、「発展」さらには、「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念として捉えられる。」としているが、会社は「キャリア」を出世と言っている。会社は利益に貢献する社員、すなわち成績優秀=出世する人を歓迎するわけで、当然である。「キャリアウーマン」という言葉は会社向けの”キャリア”解釈である。現在、この言葉を使うとダイバーシティに触れるので、オヤジが「キャリアウーマンだね。」等と迂闊に言うと周囲は固まる。
目標設定に業績と行動を記入するが、もう一つ「キャリア」という枠があり、いつ、何をしたいか、その実現に必要な能力開発を記入する。
ラットレースに乗る人は「2年後にマーケティング部、4年後に戦略企画部、6年後に海外勤務、8年後事業本部長、必要なスキルはMBA、英語、データ分析、プロジェクトマネジメント」と書くだろう。それを見た上司は「わかった。学校行っていいよ。研修に行っていいよ。」である。部下のキャリアを実現させるのが上司の評価になるので、上司は張り切って支援する。
ところが、ラットレース中の優秀な人は会社の支援によりスキルを向上し昇格したら他社へ転職する。レース参加者はライバルが抜けて目標のキャリアに届くと思ったら、地球の裏側から外国人が異動してきて希望の役職に就けない。椅子取りゲームは1回で決まるので、ゲームで負けたら辞めるしかない。
何人の社員がキャリアプランを上司に伝えているのだろうか。私は社会人になってからキャリアプランなしでここまできた。目の前の仕事に向き合えば、スキルは向上するし関連する新しい仕事が就いてくる。
目標設定でキャリアプランを書くことができないので、上司との対話をどうやりすごすか悩む。上司に「〇〇さんは、キャリアプランをどのように実現してきたのですか。」と質問し自分の話す時間を避ける。偉くなる人は自分の事を話すのが好き(自慢)で詳しく話す。興味があるような態度を見せて自慢話を続けてもらう。時間稼ぎになって大変助かる。時間が無くなってきたところで「あとで書いておきます。」とごまかして終了。幸い毎年上司が替わるので、この手法は有効である。
上司も本当はキャリアプランについてよくわかっておらず、部下に説明できないのではないか。お互い様である。
キャリアプラン、キャリアパス、キャリアデザイン、キャリアヴィジョン、キャリアチェンジ、キャリアゴール、キャリアストーリー、、。
カタカナで聞こえが良いのでプレゼンや会話で”映える”が、誰も正確なところはわかっていない。